歌舞伎蝶
第1話
作者:hide
『新しい夜の始まり』
「私は本気だよ、一緒に住みたいと思ってる。」
華やかな電飾に落ち着いた音楽と雰囲気で飾られた夜の飲み屋で
10代のキャストの子が私に言った言葉だ。
「あと3年はここ(歌舞伎町)にいるかな23・4までには結婚したい。」
もう1年近く付き合いがある頃になると
こんな会話がよく繰り返された。
だがこんなやりとりはここではよくあることだろう。
本気と冗談が半分か、冗談だけかは分からない。
本気なのかさえも。
ただこの子はとても純粋な目でニコっと笑う。
とても嬉しいことがあるとそういう風に。
肩にもたれかかり
「すごく落ち着く。今すぐには無理だけど一緒に住もうね。」
あとどれだけこんな会話が続くのだろう。
これに答えが出せるのはもう少し時間がかかりそうだ。
そもそも色恋沙汰にはあまり興味がない、
もういいかなこんな会話は....。
程々で。
ここではこんな危なっかしい擬似恋愛
が繰り返されていた。
新宿歌舞伎町......
ここは楽しい街だ。
初めてここに来たのはいつのことだったか
もう忘れてしまった。
新宿東口の歌舞伎町方面の出口を出ると
懐かしくも活気に満ちた空気で満たされ
体中にエネルギーが沸いてくる。
新しいものを発見したり
おもちゃをま前にしてどんな遊びをしようか
わくわくしている子供の頃のような
そんな心境にも似ている。
今日はどんなことがあるのだろう。
人.....
ここには色んな人がいる。
色んな過去をもってきた人がいる。
そしてここでも創っていく。
いけばいつも会う人もいる。
ここにはとても人間くささがあった。
広いようでとても狭い街。
ここにはさまざまな代名詞もある。
ホスト・キャバクラ・風俗・ヤクザ・外国人...
〜と言えば?
で真っ先に挙げられる街の筆頭ではないだろうか?
夜の街としても度々テレビなどのメディアでも関心が寄せられている。
2004年には歌舞伎浄化作戦で大掛かりな摘発が行われて以来
度々違法風俗店・アダルトショップ・不法滞在者や風営法違反店など
非合法な営業をしている店が姿を消しおとなしくなりつつあるが
それでも輝きは衰えていない。
私もこんな街に魅了されているのだ。
冒頭の話に戻ろう。
私は誰かに彼女に求めているものは?
と聞かれても答えに窮してしまう。
普通ならお酒を飲むだけでなくプライベートでも付き合ったり
肉体関係を求めたりといろいろな欲望があるだろう。
およそ歌舞伎町に来る人なら
ほとんどが下目当てであることは間違いないであろうが
私はそんな気はあまりない。
楽しい時間がすごせたらそれでいいと思っている。
なりゆきでそうなるならなってもいいが
端から下目当てではない。
『楽しければいい』
それだけで満足。
今は彼女との関係を急いでいるわけではない。
「同棲したことあるけど、あんまよくなかった。
トラウマがあるんだよね。」
彼女は中学時代に家を出て友人宅に世話になり
それから当時の彼氏と同棲生活をしていたが
暴力を振るわれたり
理不尽な扱いをされたことがあるという。
結局1ヶ月で終わってしまったようだ。
聴いても腹の立つ話ばかりだった。
私は同棲生活の経験がないので
憧れはある。
彼女は芯がしっかりしていそうなので
いいと思ったのだ。
ただ、プライベートでは食事をしたり買い物をしたり
といったことしかない。
今後どんな関係になっていくのかもわからない。
ただ言えることは
基本的に私はこの場での色恋沙汰は
フィクションだと思っている
自分の疑いが解消できたとき答えが出せるだろう。
そんな日は来るのだろうか....
・・・・『プロローグ/新しい夜の始まり』
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